マーケットから見たホリスティック医療への流れ
                       実践健康研究家 SIGEL先生


 

1.市場ニーズと産業構造の大転換

1)医薬品産業吸収合併による統廃合
 資本主義経済が進むと、強い会社はどんどん成長し、
 弱い会社はつぶれていくという流れになっており、
 私が身を置く製薬業界も他の業種と同様、
 世界的な統廃合の時代に突入しています。
 グローバル化が進むと、
 世界中どこへ行っても同様のサービスを享受できるようになる半面、
 最もいい製品を供給できる会社は残り、
 その他は衰退していくという流れが起こります。

これまで、製薬会社は、日本国内だけで新薬を開発して販売すれば、
 高収益をあげることができたのですが、
 研究開発費の高騰により、日本市場での販売だけでは、
 研究開発にかけたコストを回収できない状況になってきており、
 米国や欧州などの世界の主要マーケットで販売力を持たないと
 利益確保が難しい状況になってきました。

世界の大手は、数年前からどんどん吸収合併を繰り返し、
 巨大化しており、
 日本のトップクラスの製薬企業でも世界企業とくらべると10分の1くらいの規模です。
 グローバル競争に勝ち残るには、
 日本でもこれからさらに統廃合が拡大していくだろうと予測されます。

 2)代替医療市場の急成長
 一方で、欧米の医療市場における、この10〜15年くらいのトレンドを見てみますと、代替  医療と呼ばれる市場が急速に拡大しています。

 
医療保険制度の違いもあり、
 単純に各国を同じ土俵で比較することはできませんが、
 米国などでは、6割以上の患者さんが、西洋医学の病院とともに、
 何らかの代替医療を受けているのが現状です。
 最近では、保険も代替医療分野をカバーするようになってきています。

また、ハーバード大学や、
 タフツ大学といった有名な大学でも代替医療の講座が開設され、

 今や代替医療の有用性がかなり認識されてきています。

  米国の医療市場は、約120兆円と言われています。
 そのうち、約10%の12兆円が医薬品市場の規模です。
 それに対して、代替医療と呼ばれる
 
カイロプラクティック、鍼灸、指圧、マッサージ、アーユルベーダ、ホメオパシー、
 その他の分野が約4兆円、健康食品市場が約7兆円と、
 合計で約11兆円あり、医薬品市場に迫る勢いで伸びてきています。
 (参考1)

 同様に日本市場を見てみると、
 国民医療費は、約31兆円と言われています。
 そのうち、医薬品市場は約7兆円の規模です。
 それに対して、各種代替医療市場が約1.5兆円(推定)、
 健康食品市場が約1兆円で、合計約2.5兆円くらいです。
 米国に比べると、まだまだ医薬品市場が大きく、
 今後代替医療市場の伸びる余地があることがわかります。(参考2)
 
(参考1:出展:2002年IMSデータ、Nutrition Business Journal Overview 2002、$=120円)
 参考2:出展:厚生労働省発表  2003年7月、医療保険福祉審議会資料、
 HB
フーズマーケティング2000年版:富士経済) 

 3)医療業界のグローバルトレンド

社会の高齢化→医療費増大→政府医療財政悪化→自己負担増加
 →予防への関心の高まり、あるいは、健康維持・若さへの関心、
 西洋医学的対症療法の限界、環境悪化、生活習慣の乱れなどを背景に、
 上の図に示すように、医療業界のグローバルトレンドは、
 完全に「治療から予防」へと向かっていると思われます。

欧米では、教育レベルが高く、
 高所得層の人たちの中には、
 健康にいい有機無農薬の食事を取るように努めている人が急増しており、
 ファーストフードなど「ジャンクフード」と呼ばれて、
 ほとんど口にしていないのが実情です。

 未だにファーストフードや
 とんでもない材料を使っている安い外食産業が
 隆盛を誇っているのは日本くらいのものです。
 あと5年から10年もすると"本来あるべき姿"に
 日本も変わってくると思います。

 先に述べたように、
 医薬品業界では、すでに欧米では数年前から、
 吸収合併による企業の巨大化が進行しており、
 日本でも数年以内にこの流れが加速化してくるでしょう。

しかし、その影でもっと大きな市場の大転換トレンドが
 日本でも静かに進行しています。それが、「治療から予防」への変化です。

 例えば、映画産業が隆盛を極めた後に、ビデオが普及し、
 その後ケーブルテレビが登場したように、
 産業そのものが、全く新しいパラダイムを持った産業へと変遷していきます。
 また別の例では、大型コンピュータ業界でIBMなどの
 巨大企業が隆盛を誇っているところに、
 突如パソコン市場が登場し、マイクソフトやインテルなどの
 全く新たな会社が市場を席捲しました。
 そして今携帯端末市場へと産業が変化しています。

 世界は、資本主義という同じ社会システムの中で動いており、
 医療業界も例外ではなく、
 他産業で起きているようなグローバル化の流れは同様に起きるでしょう。
 またすでに欧米で起こっている「治療から予防へのトレンド」は、
 必ず日本でも起きると考えた方がいいでしょう。

 近い将来、日本でも患者さんが、予防の大切さに目覚め、
 予防分野での市場ニーズが急速に高まってくるでしょう。
 その時にきちんとした
 信頼おける予防分野でのサービスを提供できる企業や医療施設は
 大発展を遂げ、乗り遅れたところは、
 衰退の道をたどることになるでしょう。

 代替相補医療、統合医療、ホリスティック医療など
 いろいろと言い方は異なりますが、
 大きな意味で、西洋医学や東洋医学、伝承的療法など
 いろいろな有益なところを組み合わせて、
 体だけでなく、心や精神・霊性までも含めて健全になって行こうとする考え方は、
 これから市場で起こる予防医学の流れにマッチしたものだと思われます


 実践健康研究家 & 真健康案内人 SIGEL
 2004年4月4日

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