トレーナーからの健康生活 全5部
  第2部 「F1の世界できたえて」
        ナビスポーツアカデミー代表 スポーツトレーナー 櫻井優司氏


 パラリンピックという種目に出会うまでは、
 F1のフォーミュラカーのレーサーのトレーナーをして、
 世界中転戦をしていました。
 世界最高峰と言われるF1というところで活動していました。
 しかし、その選手にも事故が発生し、
 今の僕が育てた志鷹昌浩選手というのは、
 バイクの事故で頸椎損傷をして、下半身不随になりました。
 ベッドで寝ているときに、何度も神経をつなぐ手術を受けるということで、
 麻酔を何度も何度も受けて、手の指先までもしびれてきてしまいました。
 脊損になった車いすの選手がどういう感覚かというと、
 皆さん正座したことがありますよね、
 30分や1時間くらい正座しますとしびれます。
 そのジーンとしびれた感覚が24時間ずっと続いているわけです。
 触っても感じない。
 だからパラリンピック、チェアースキーで
 雪の上のトレーニングをするのに一番気をつけなければいけないのは、
 彼らの足の指が凍傷になっていないかということなんです。
 靴を脱いだ瞬間に、ブーツの中は血だらけになっている。
 凍傷でつめがはがれてしまっている。
 気がつかないんです。
 そういうところに注意を向けて、
 彼らと一緒に何年も何年もスキーの技術向上をしてきました。

 僕は彼らを見て、あるいは地雷を踏んだ子供たちを見て、
 もうこれは続けなければいけないな、
 お金ではない、続けて伝えていくことが、僕らの仕事だなと思っています。
 確かにF1という頂点を迎えた、
 頂点を目指すためのレーサーたちがたくさん僕のところに来ています。
 あるいはサッカーの選手、ラグビーの選手、
 アメリカンフットボールの選手が手首が痛い、
 首が痛いと言って来ます。
 治してあげることは可能です。
 だけど甘えてしまって、痛いと言えば休めるという、
 そういう構造になっている子供たちにはつっけんどんにします。
 あまり近づきません。
 目標や目的があって、出たい、行きたい、やりたい
 という意欲がこちらに伝わってくれば、
 常にそれを受け入れるようにしています。

 F-1の選手と世界中転戦をしてきました。
 その選手と一緒のホテルに泊まります。
 朝食は大体7時くらいです。
 8時にはホテルを出て、9時にはサーキットに入ります。
 僕は何をするかというと、
 まず選手の食事の1時間前に食堂に行きます。
 大体世界中どこでも朝食はバイキングです。
 ちょこっとずつお皿に取りすべてをそろえます。
 チーズを食べ、パンを食べます。
 牛乳やオレンジジュースや、すべての食材を全部食べます。
 選手が7時ごろ来る。
 「おはよう、優司君」「おはよう」「どう?」
 「あっ、そのロールパンはおいしいよ。
 このトルココーヒーはすごいのどが渇くからやめて。
 この牛乳はトロトロでチーズみたいだから、
 これはやめたほうがいい。
 このパスタはいいよ。このサラダはおいしい。
 このドレッシングは辛いからだめ。
 バターはこれとこれにして」というふうに指示をします。
 彼は「ああこれとこれね、こんなものでいい?」
 「ああ、オッケー、オッケー。あとオレンジジュースと水は用意しとくね」。
 信頼関係があるから、僕の味覚を信用してくれるんです。
 どんなことが起こるか。食事に悩まないんです。
 彼はF-1で勝つために来ているんで、
 食事に勝つために来ているのではないんです。
 すべて周りのことは、僕らがケアをします。
 サーキットに出たら勝つだけ、走るだけ、それに集中させます。


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