パラリンピックという種目に出会うまでは、
F1のフォーミュラカーのレーサーのトレーナーをして、
世界中転戦をしていました。
世界最高峰と言われるF1というところで活動していました。
しかし、その選手にも事故が発生し、
今の僕が育てた志鷹昌浩選手というのは、
バイクの事故で頸椎損傷をして、下半身不随になりました。
ベッドで寝ているときに、何度も神経をつなぐ手術を受けるということで、
麻酔を何度も何度も受けて、手の指先までもしびれてきてしまいました。
脊損になった車いすの選手がどういう感覚かというと、
皆さん正座したことがありますよね、
30分や1時間くらい正座しますとしびれます。
そのジーンとしびれた感覚が24時間ずっと続いているわけです。
触っても感じない。
だからパラリンピック、チェアースキーで
雪の上のトレーニングをするのに一番気をつけなければいけないのは、
彼らの足の指が凍傷になっていないかということなんです。
靴を脱いだ瞬間に、ブーツの中は血だらけになっている。
凍傷でつめがはがれてしまっている。
気がつかないんです。
そういうところに注意を向けて、
彼らと一緒に何年も何年もスキーの技術向上をしてきました。
僕は彼らを見て、あるいは地雷を踏んだ子供たちを見て、
もうこれは続けなければいけないな、
お金ではない、続けて伝えていくことが、僕らの仕事だなと思っています。
確かにF1という頂点を迎えた、
頂点を目指すためのレーサーたちがたくさん僕のところに来ています。
あるいはサッカーの選手、ラグビーの選手、
アメリカンフットボールの選手が手首が痛い、
首が痛いと言って来ます。
治してあげることは可能です。
だけど甘えてしまって、痛いと言えば休めるという、
そういう構造になっている子供たちにはつっけんどんにします。
あまり近づきません。
目標や目的があって、出たい、行きたい、やりたい
という意欲がこちらに伝わってくれば、
常にそれを受け入れるようにしています。
F-1の選手と世界中転戦をしてきました。
その選手と一緒のホテルに泊まります。
朝食は大体7時くらいです。
8時にはホテルを出て、9時にはサーキットに入ります。
僕は何をするかというと、
まず選手の食事の1時間前に食堂に行きます。
大体世界中どこでも朝食はバイキングです。
ちょこっとずつお皿に取りすべてをそろえます。
チーズを食べ、パンを食べます。
牛乳やオレンジジュースや、すべての食材を全部食べます。
選手が7時ごろ来る。
「おはよう、優司君」「おはよう」「どう?」
「あっ、そのロールパンはおいしいよ。
このトルココーヒーはすごいのどが渇くからやめて。
この牛乳はトロトロでチーズみたいだから、
これはやめたほうがいい。
このパスタはいいよ。このサラダはおいしい。
このドレッシングは辛いからだめ。
バターはこれとこれにして」というふうに指示をします。
彼は「ああこれとこれね、こんなものでいい?」
「ああ、オッケー、オッケー。あとオレンジジュースと水は用意しとくね」。
信頼関係があるから、僕の味覚を信用してくれるんです。
どんなことが起こるか。食事に悩まないんです。
彼はF-1で勝つために来ているんで、
食事に勝つために来ているのではないんです。
すべて周りのことは、僕らがケアをします。
サーキットに出たら勝つだけ、走るだけ、それに集中させます。
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