マクロビオティックと和解する方法 
 第2回:呼吸法はハゲに効くか 体は面白いが、頭はつまらない呼吸法
 増田忠士 氏


  前回、1993年の12月18日(土)から、
渋谷にある西野流呼吸法の道場に通うことにしたと 書きました。
しかし、正確にはその2週間前の、12月4日(土)からでした。

○呼吸法はハゲに効くか

 さて、その動機は薄くなり始めた自分の髪の毛を
何とか現状維持できないか、あわよくば復活できないか、
ということでした。

 その話をする前に、カツラが必要になるといくらお金がかかるか
ご存じでしょうか。
 メーカー自身は価格を公にしたがりません。
 体験者の証言によって実態が漏れてきます。
 ネットで調べてみると、大手メーカーのカツラの場合、
40万円〜100万円であるようです。
 中には、いろいろな理由をつけて買い替えをすすめられて
幾つもカツラを買うことになる場合もあるとか。

 一方、私が西野塾に支払った総額を調べてみると、46万円でした。
 入会金1万円、月4回通う場合の月謝が1万5千円。
 1回、忘年会にも参加しましたので、その参加費。
 品川のホテルでの盛大豪華な忘年会では、
西野流呼吸法の看板娘・由美かおるが舞台に現れて挨拶をしていました。
彼女を見たのは、このときだけ。
 彼女は私より数ヵ月年上なんです。
体も若いが頭もとても若い感じがしました。

 その46万円のほとんどは、2年4ヵ月にわたって払った月謝です。

 それはともかく、育毛・ハゲ対策に効果があるのではと思い込み、
入門した西野流呼吸法だったのですが、
その期待は初日にもろくも崩れてしまいました。

 道場の中に、髪がかなり薄い、若い指導員がいたのです。

 しかし、彼は呼吸法をしたから、その辺で踏みとどまれたのかも。
呼吸法をしなかったら、ツルツルだったかも。

 そんなことは考えませんでしたが、払ってしまった入会金と月謝が惜しくて、
とにかく3ヵ月間だけは通うことにしました。
 その間に、何の変化も起こらなければ、即脱会だ。

 まずは入門・初心者コース。

 90分間の呼吸法と体操を全員でやる。
 続く30分間は、指導員と1対1で手首を合わせて押し合う「対気」。
 初心者が長い列を作り、指導員と順番にこの対気のトレーニングを
3〜4回する。
 だから、30分といっても、ほんの一瞬が数回あるだけ。


 最初の、12月4日(土)。
 まったく何も感じない。

 1週間後の2回目。
 足裏から息を吸うというイメージがうっすらと分かる気がした。

 翌週の3回目。
 最初の対気で、左腰内部に小さく光る感じ。
 2度目の対気で、腰全体に衝撃がない爆発をはっきりと感じる。
 指導員から「結構です」の声がかかる。
 対気の際、指導員は私に気を送り、反応があれば分かるのだ。
 複数の指導員からこの声がかかれば上級の一般教室に移れるシステム。

 4回目・12月25日(土)は何も感じなかった。
 ただし、呼吸法・体操で汗ばむようになってきた。
 運動量はほとんどないので、体操をしながら自分で
体内に気を回さない限り、体が熱くなることはない。
 私の体内を少しは気が回り始めたのだろうか。

 正月休みに家で呼吸法の復習をやっていると、
突然、気なるものを感じることができた。
しかし、これは自己催眠と言えなくもない。

 複数の指導員のOKをもらって上級クラスである一般教室に移る
標準期間が3ヵ月。
 しかし、その後の私はなかなか声をかけられない。
 同時期に入った女性などはどんどん一般教室に行っているというのに。

 4ヵ月後に勝手に一般教室に移ってしまった。
 こちらは指導員も生徒もベテランがそろっている。
 見渡すと、やはり髪の毛の薄い人が目立つ。
 女性の指導員や生徒にも、由美かおるのような人はいない。
 西野流呼吸法は、ハゲにも顔にも効かないようだ。


○体は面白いが、頭はつまらない呼吸法

 一般教室では、対気を本格的にやる。時間も長くなる。
 皆、対気で激しく反応している。
 私はなかなか対気で反応しない。
 同時期に入って早々と一般教室に移っていた若い女性は、
対気で面白いように転げ回っていた。

 気のほうは全然進展がなかったが、
私の体の中で不思議なことが起こった。
 それまでの人生で、自分の便の量は当然のこととして把握している。
 便秘の経験もあれば、下痢の経験もある。

 それは春のある日、食べた量の3倍が出た。誰のウンチだ?
 これが、いわゆる宿便か?
 もう、モリモリ、モリモリ、モリモリという感じ。

 この呼吸法は便秘・痩身に効くと思う。

 その内、東大を卒業して西野塾の指導員になったという人から、
自分は1年間やってやっと対気に反応するようになったという話を聞いた。
 理屈っぽいヤツほど反応しないようだ。

 私は頭は良くないのだが、やはり1年近くかけて段々と
対気に反応するようになった。
最初に見た、講演会での西野氏と弟子たちによる実演ほどにはいかないが、
対気で飛ばされる経験をした。

 私と対気の相手をしてくれるのは、指導員と、
私たちと同じ一般参加者から選ばれた先輩だ。
 相手によって、私の反応が大きく異なる。

 高齢の指導員との対気では、気を入れられた瞬間、
私の両膝がガタンと床に着き、腰が抜ける。
 小柄な女性指導員とでは、
真空投げとはこの事かと思うほど回転させられる。
 若い大柄な指導員とでは、気持ち良く吹っ飛ばされる。
 古参の指導員とでは、反対側の壁まで瞬間と思える時間で移動してしまう。
 ある先輩とでは、気がつくと斜めに倒されている。

 ときどき西野先生と対気をする機会に恵まれる。
 西野先生とでは、熱帯のジャングルに瞬間移動をしたような
熱気と湿気を感じる。
 私は、飛ばされることはない。
 何だか生暖かい大きな「気」のボールに包まれたような感覚。

 この体験を何と表現したらいいのだろう。
 それまでの人生でまったく経験したことがない不思議な感じ。
 自分の身体が、ある刺激によって勝手に動いてしまう。
 自分の中にこんな部分があったとは。

 まさに、人生観が変わる体験だった。
 46万円の価値はある。

 私は毎年冬になるとぎっくり腰をやっていた。
 西野流を始めてからは、それがなくなった。
 ぎっくり腰にも効く。

 西野氏にはたくさんの著書がある。
 著者に興味がわくと、そのすべてを読みたくなる癖がある私は、
書店で著書を発見すると買って読み続けた。
 しかし、合気道系の西野氏には私を満足させる理屈がない。

 この不思議な世界に理屈を求める私が変なのだが、
どうにもフラストレーションがたまる。

 その欲求不満が、私の本棚の片隅にあった「ガンもエイズも治ります」と
書かれた怪しげなビデオ・セットに注目させたのだと思う。
 このオカルトチックなビデオへの興味は、
西野流呼吸法での経験がなければ、
私の中でけしてわかなかったと思う。

 西野塾に通い出してから約1年後の、
1995年2月12日(月)に久司ビデオを観ることになる。
5巻セットで、合計約9時間。

 東京・渋谷にある西野塾へは、
その1年後の1996年3月23日(土)まで、片道約2時間をかけて通い続けた。
 呼吸法にしっかりと身体が反応するようになると、
冬の寒い時期でも、道場から自宅まで身体がポカポカした感じが
持続するのが不思議だった。
 それでも、その3月23日を最後に西野塾とは縁が切れた。
 マクロビオティックという、もっと面白いものを発見したからだ。


 このように、呼吸法での不思議体験が
久司ビデオを観るきっかけになりました。
 私の中では、「デカルトからオカルトへ」の転向です。

 次回は、「久司マクロ、この不思議なもの」です。 


 

>> BACK

(C)株式会社ワイズプラン・ケイ 2002-2003